今回はレアル・マドリードで真価を発揮できなかった「セルビアの神童」であるルカ・ヨビッチについて解説する。フランクフルトでは活躍できて、レアル・マドリードで活躍できなかったそのわけに迫る。
基本情報・成績
セルビア代表
ポジション:センターフォワード
生年月日:1997年12月23日
レアル・マドリードでの成績:42試合3ゴール4アシスト
フランクフルトでの成績:80試合39ゴール9アシスト
市場価値:フランクフルト(6000万€)→レアル・マドリード退団時(2200万€)→レアル・マドリード復帰現在(2000万€)
移籍金:フランクフルト→レアル・マドリード(6000万€)
レアル・マドリード→フランクフルト(レンタル料100万€)
プレースタイル

抜群の身体能力
ヨビッチの最大の特徴はフィジカルだ。身長は182cmと大柄というわけではないが、そのフィジカルゆえに大柄なCBと競り合っても負けない。ジャンプ力と驚異的なボディバランスで上からボールを叩きつけることができ、2人相手でも強引にフィジカルで跳ね飛ばすことができるほどだ。
またアクロバティックなプレーも可能。高い身体能力と体をうまく使って、ボレーシュートを叩き込むこともしばしば。
ヨビッチは高い身体能力をドリブルにも活用する。上半身の筋肉は凄まじいので、ディフェンダーを引きつけないハンドオフも巧みである。足もストライカーとしては及第点以上であり、スピードに乗った状態でハンドオフを利用しながらDF2枚を一気に剥がしたシーンは多くのマドリディスタの印象に残っている。
高いシュート技術
ヨビッチのストライカーとしての天性の才能はフィジカルだけでない。シュート技術もまたヨビッチの長所の一つだ。両足を遜色なく蹴ることができ、ディフェンダー、ゴールキーパーはどちらのコースを切ればいいか困惑するだろう。
ヘディング、ボレーシュートにしてもしっかり枠内に高確率で飛ばすことができ、意外性のあるコースに蹴り込むこともしばしば。空中戦の勝率は高く、ジャンプ力を生かしてセンターバックに挟まれていても勝ってしまうこともある。
プレースタイルはストライカー
ヨビッチはプレースタイル的にはストライカーの言葉が適切であろう。彼はボックス内で力を発揮する。フランクフルト時代ではポストプレーからカウンターの起点となることが多かったが、フランクフルトのカウンターサッカーの中で生きた技術であり、ラ・リーガになるとまた話は別だった。彼は前線で起点になるのではなくフィニッシャーが適正であることがはっきりした。
あまり動き出しの回数が多い選手ではなく、少ないチャンスで質の良いプレーをするタイプのストライカー。動き出しが多いタイプではないので試合から消える時間も少々長いという弱点も。
しかし、ボックス内での強さはベンゼマにも引けをとらず、今後成長を続ければジルーを超えるボックス型の選手になるだろう。
ヒートマップからわかるヨビッチの不調

上図のヒートマップを見て欲しい。このヒートマップからわかるようにヨビッチはマドリーに来てからプレー範囲がかなり広くなっている。慣れないベンゼマのような振る舞いをしてヨビッチのプレーエリアが大きく後退してしまっているのだ。
前述した通りヨビッチの魅力はボックス内での強さにある。フランクフルト時代にはボックス内のヒートマップがとても濃いがマドリー時代のボックス内でのヒートマップはフランクフルトほど濃くなっておらず、得意な位置でのプレーができていないのだ。
経歴
ヨビッチのキャリアは近年チャンピオンズリーグでの活躍が目覚ましいセルビアのレッドスター・ベオグラードから始まった。レッドスターで16歳でプロデビューを果たすと、最終節でゴールを決めチームをリーグ優勝にも導いた。
その後、ベンフィカに移籍するも試合に出場することができずフランクフルトにレンタルレンタル移籍することとなってしまう。しかしその移籍が功を奏す。コヴァチ監督のもと、フランクフルトで覚醒。フランクフルトはヨーロッパリーグへの出場権も手にし、大会ではヨビッチの大活躍もありベスト4に進出。チェルシーと死闘を繰り広げた。
ヨビッチ自身当時も21歳にして、ブンデスリーガで17ゴール、ヨーロッパリーグで10ゴールをあげ白い巨人の目に止まった。ヨビッチはマドリーに行き、ベンゼマの後継者となるはずがなかなかジダン監督からの信頼と出場機会を得られず、活躍できないまま放出候補にまで挙げられてしまう。コロナ禍での規律違反のスキャンダル、怪我なども続き災難な1シーズン目を終えてしまった。
ベンゼマのバックアッパーとしてマリアーノが選ばれ、居場所を失ったヨビッチはフランクフルトにローンバック。そこでフランクフルト再加入初戦で2ゴールを挙げ当時マドリー時代にあげた得点数と並んだことで大きく話題になった。